- 改めてMAGIC STICKを立ち上げた経緯やコンセプトについて教えてください。
立ち上げは2009年です。それまで違うアパレルブランドにいたのですが、ストリートウェアみたいなものが台頭している時代だったけど、あまり自分自身が着たいと思える服がなかったので、自分でもやってみたいと思っていたんです。そこから退社して1年ぐらい準備期間があって、イベントを渋谷界隈で乱発して、こういうことをやろうと思っているというのを一気に皆んなに知ってもらう動きをしました。ブランド名に「MAGIC STICK ENTERTAINMENT.」と「ENTERTAINMENT」という言葉が付いているのは、イベントであったり、洋服だけじゃない人を楽しませることをベースアイディアにストーリーのあるものを作っていきたいというコンセプトから始まってます。その後、渡米して色々と考える時間、ベース作りを作ってから東京に戻り、ファーストコレクションを発表しました。
- ブランド設立時と現在のファッションシーンにおいて特に変わったと感じる部分はありますか?
消費速度が早くなり過ぎてるなと感じます。ブランドの元々のコンセプトにも、大量消費型のアパレルじゃなくて、大切に長く着るというのがあるんです。でも、今は出ては消えて、出ては消えての繰り返しになってしまってますよね。ブランドも10年、20年って続けてこそブランドだと思うんです。作り手も買い手もメディアもそのマインドが変わってしまったのかなという気がします。
- なるほど。では、MAGIC STICKで掲げている「大事に長く着る」という想いは、逆に日に日に強くなる一方ですか?
そうですね。ロゴのアイテムもアイコニックで良いと思うんですけど、自分はスーパー天邪鬼なので、それじゃない物作りをしたいなと思いますね。ロゴの自己主張ではないスタイルの自己主張的な。
- 最近のMAGIC STICKといえば、DJ KRUSHさんとMUROさんなど東京のレジェンドたちをモデルに起用した22SSのスペシャルなルックブックはすごく印象的でした。
元々僕は海外にすごい目を向けていたので、当時で言えばTravis Scottでルックを撮ったり、海外のクリエイターやアーティストを呼んでイベントをやったりをしていたんですけど。コロナ禍になって海外へ出れなくなったことによって立ち返ってみて、外だけじゃなくて、もっと中を見ようと思う様になったんです。
- コロナがきっかけだったんですね。
目線を変えられたという意味では、良いきっかけでした。そこから、もっと身近なところにすごい人たちがいっぱいいるじゃんということに気付いて。日本であくまで喩えだけどDr.Dreに匹敵するような人を考えた時、DJ KRUSHさんだったし、それにMUROさんもそうだし。一緒にやっていたクルーであるKRUSH POSSEで出てもらえたら相当ヤバいと思ったんです。今人気の若手アーティストを起用するんじゃなくて、カルチャーとして自分が影響を受けたOGをブッキングできたら凄いことだなと。第一に自分がずっと好きだった人たちに着てもらえることが嬉しいですし、自分がスタイルを真似していた人に今は作ったものを着てもらえるなんて当時じゃ考えられない夢が叶ったなと思いますね。
- 今興味のあるカルチャーやシーンは何かありますか?
筋トレカルチャーです(笑)。トレーニングカルチャーに興味があるんです。やったらやっただけ成果が出るというストイックな世界観はすごく良いですよね。アリモノを使ったファッションっぽいものばかり目にするのでもっとストリートなトレーニングカルチャーが今後もっとリアルにファッションとも結び付きがあるんじゃないかと思ってます。流行りのゲーミングウェアじゃないですけど。
EUも北米もアジアもみんなが少しずつ復活してきている感じをSNSで見ます。また価値感が数年前と変わった洋服も見ていて楽しい。パリにも夏には戻りたいなと思っています。よく見ているのですが、関係ないカルチャー同士の結び付きはおもしろいんじゃないかなと思います。
- 今野さんといえば、やはりスニーカーのイメージが強いですが、改めてスニーカーとはどんな存在ですが?
下着ですかね(笑)。下着と一緒で365日履く物だし、本当に身体の一部みたいなものです。
- これまでの人生で特に思い入れのあるスニーカーは?
記憶にあるものでいうと、NIKEのAIR MAX plusとAIR TERRA HUMARAはすごく思い出があります。所謂アルファプロジェクトなど全盛の2000年代前半のNIKEがすごい好きでした。あの頃って、自分の10代20代の青春時代に生まれたNIKEのハイテクシューズは衝撃的で。今はスタイルが少し変わってなかなか履かなくなってしまいましたが、プロダクトとして飾っておけるぐらいのクオリティの高さを感じますね。
- そんなNIKEとは過去にコラボレーションしたスニーカーなども出していますが、NIKEとの取り組みで印象に残っていることは何ですか?
AIR MAX DAYで各国から代表を選んでAIR MAXをデザインするプロジェクト「VOTE FORWARD」に参加させてもらった時ですね。ポートランドのHQに行かせてもらったり、一生に一度しかないような経験だったと思うので、印象深かったです。好きでやっていたことが身になったと思えた瞬間でした。
- その時の経験などで、ご自身のクリエイティブに影響があったことはありましたか?
良い意味でマスマーケティングの仕方を理解した気がしました。それまで作るものに対して、自分のやりたい事の100%を詰め込んでいましたけど、これを機に少しブラッシュアップできるようになった気がします。クリエーションのバランスの取り方はすごい勉強になった気がします。
- 今回StockXからコラボレーションの話が来た時は、どんなお気持ちでしたか?
スニーカーなどに興味を持った人がたくさん集まる窓口がとにかく広い場所なので、世界中の人に見てもらえる良い機会だし、面白いかもと思いました。StockXは所謂ハイプな商品が中心だと思うんですけど、僕たちはハイプブランドでもないし、むしろまだまだ知らない人ばかりだと思います。リセールマーケットプレイスで正規の価格、かつロゴレスな服を売るというのが今回の企みのひとつです。
- しかも、コラボレーションなのに作ったのはパンツのみという。
そう、みんなコラボレーションアイテムとなるとTシャツとかトップスを思い浮かべると思うんですけど、天邪鬼なので(笑)。マーチャンダイズグッズのような物は作りたくなかったんです。後、スニーカーを好きな人が集まる場所でやることを考えた時に、やっぱりスニーカーに合うパンツを作ってあげたいという思いがありました。僕も靴が好きなので、MAGIC STICKでも色々な靴に合わせやすいパンツを作っている自負があるので。それをちゃんと見せたかったんです。ハイプなトップスやシューズだけど、パンツは量産品の低価格なものというスタイルの人をよく見るので、そこを変えたかったかな。
- 具体的にこだわっているポイントは?
ジョガータイプは僕もずっと履いているタイプのもので、そのままジムにもいけるし、これにテーラードジャケットを着ることもある。ウェアラブルでとにかく合わせやすくて快適なパンツだと思います。もう一方は、今年グリーンがちょうどブームということもあるし、StockXのキーカラーを使用したもので、来シーズンインラインで出す形の先行モデルです。シャツを着たり、デニムを合わせたり、ジャージでも体育着みたいにならない様なスタイルの提案をしっかりしたいなと思って、ストレートシルエットのタイプも作りました。普段着で仕事している人なら、どこへでも行けるし、そのまま寝ることもできる。コンフォートという要素は、MAGIC STICKのアイデンティティなので。
- なるほど。
今回はStockXというブランド、プラットフォームで、ハイプロゴの無いベーシックなアイテムを売るというチャレンジでもあるんですけど、どこまで反応してくれる人がいるか見てみたい。これに反応してくれる人が増えていったら、ハイプなものだけじゃなく、ファッションの楽しさ自体も再認識してもらえるのではないかなと思います。
PHOTOGRAPHY: Houmi Sakata(TRON)
DropX限定 MAGIC STICKコラボ数量限定アイテムは、日本時間2022年3月24日(木) 12時より発売開始。発売商品の詳細はウェブサイト、SNSで配信します。StockX JapanのInstagramまたはTwitterをフォローして、発売開始をお見逃しなく!