エアマックス

3 / 18, 2021

エアマックス95の遺志を継ぐスニーカー集 Part.2

By Nobukazu Kishi

By Nobukazu Kishi

前回に引き続き、それまでミッドソールの後足部に限定されていたビジブルエアを初めて前足部に搭載した革新的なエアマックス誕生の四半世紀前まで遡る。Fall 95にリリースされたエアマックス95は、ナイキエアが理想に掲げた、ミッドソール全体をエアバッグで占有する究極のエアクッショニングシステムへの第一歩を踏み出したのである。その開発段階ではミッドソールの前後にマックスエアを配置したことで「エアトータルマックス」と呼称し、エアマックスの進化の系譜が新たなフェーズに突入したことを示唆していた。

この歴史的快挙に相応しい特別なエクステリアを要求されたのがデザイナーのセルジオ・ロザーノだった。彼は人体の筋肉や骨格をモチーフに、アッパー側面に層を成す立体的なオーバーレイやシューレースと連動してアッパー全体に張り巡らせたパイピングテープによって筋繊維や肋骨の構造を表現。そうしてミッドソールの前後に及んだビジブルエアが際立つよう漆黒のフォームにネオンイエローのエアバッグを配色し、アッパー側面にグレーのグラデーションを描くことでエアマックス95のファーストカラー「ネオン」が誕生した。その偉業は、90年代後半のハイテクスニーカーブームを牽引したエアマックス95の実績に照らす迄もないが、一方ではプレミア価格の高騰からエアマックス狩りや偽造品の流出など負の遺産をもたらしたのも事実だ。

本稿では、グレーのグラデーションにネオンイエローを配色したエアマックス95の独創的なカラーウェイが、ナイキにとって如何なる意味を持つのか-それを探るべく、革新的なイノベーションを実現するたびに「ネオン」に彩られたエポックメイキングがリリースされる現象を踏まえ、それらの厖大な履歴を前後編に分けて検証する。後編は、新たなギミックを利かせたエアマックス95の派生機からヴェイパーマックスを経て、ナイキを代表するアイコニックなモデルへ拡散した実態を明らかにしたい。

 

NIKE AIR MAX 95 V SP (2015)

エアマックス スペシャルエディション

エアマックス95生誕20周年にあたる2015年のAIR MAX DAYに向けてリリースされたスペシャルエディションは、グレーのグラデーションにネオンイエローを配色したファーストカラーを踏襲しつつシュータン及びヒールにベルクロ素材を縫い付け、airmaxロゴのパッチなど付属のパーツを自由に貼って楽しめる仕様。趣向を凝らした遊び道具としてのエアマックスが新しい感覚。

 

NIKE AIR MAX 95 OG PREMIUM REFLECTIVE (2015)

エアマックス リフレクター

同じくエアマックス95の生誕20周年アニバーサリーモデルとして登場したリミテッドエディションは、一見してイエローグラデの復刻かと思いきや、アッパーサイドのレザーを重ねたオーバーレイが暗闇で光を反射、グレーのグラデーションからシルバーに変化するリフレクター仕様。その盛大な反射光がエアマックス95の記念モデルに相応しいギミックと認定された3M企画。

 

NIKE WMNS AIR MAX 97 NEON (2017)

エアマックス95 ウィメンズ

エアマックス95から2年後のFall 97デビュー、トータル第3世代にあたるエアマックス97は一気にフルレングスビジブルエアを搭載し、ナイキエアが加速度的な進化を遂げたエポックメイキング。エアマックス95とも好相性の流線型のデザインにはネオンカラーを落とし込むのもスムース。ウィメンズモデルで展開された95コンセプトのエアマックス97という選択。

 

NIKE AIR VAPORMAX 95 (2018)

ヴェイパーマックス

360マックスエアの課題とされたデュラビリティ=屈曲性を追求し、深い溝で区切られたエアバッグの集合体がクッショニングの新たな基準に。そのツーリングをネオンカラーで彩り、エアマックス95のアッパーに装着したハイブリッドモデル。ヴェイパーマックスという最新テクノロジーのポテンシャルを証明する上で、エアマックス95とのフュージョンが試金石のように扱われる昨今。軽量化も実現したハイスペックなアイコン。

 

NIKE COURT VAPOR RF x AM95 (2018)

ロジャー フェデラー

世界最高峰のテニスプレーヤーの一人、ロジャー・フェデラーは過去にエアジョーダン3のエッセンスを取り入れたシグネチャーモデルを展開したが、本作ではエアマックス95のグラデーションをはじめ、アイレット及びスウッシュにネオンを配色した新型コートヴェイパー。アッパーサイドの凹凸感を際立たせたオーバーレイが特徴のテニスシューズはRFコレクションの中核だったが、現在フェデラーとナイキは契約を終了。

 

NIKE AIR MAX 95 WOVEN (2019)

エアウーブン エアマックス

エアウーブンに象徴されるアッパーの生地の編み込みをエアマックス95で実践したハイブリッドモデル。ウーブンテクノロジーを駆使したアッパー側面のオーバーレイは立体感が際立ち、モノトーンのグラデーションにネオンイエローが交差する色合いも特徴。ビビッドな赤や青を挿し色に構成した配色は、エアマックス95のファーストカラーとは一線を画すものの伝統の継承は大いに感じさせる。

 

NIKE AIR MAX UPTEMPO 95 QS (2019)

エアマックス95 アップテンポ

エアマックス95とは同期のFall 95生まれ、フォースとフライトに次ぐ第3のカテゴリーを標榜したエアマックスアップテンポは、ジョーダンの盟友であるスコッティ・ピッペン着用のシグネチャーモデル。グレーのメッシュとレザーを組み合わせたハイトップをベースに、前中後足部に搭載されたトリプルエアをはじめ、スウッシュ及びアイレットにネオンイエローを配色したリミテッドエディション。

 

NIKE AIR MAX 270 REACT ENG (2020)

エアマックス  リアクト

エアマックス180とエアマックス93をデザインのヒントにシュータンとライニングを一体化したモノソック構造を採用、270マックスエア搭載のリアクトソールを装着したエアマックス270リアクトのアップデイト版、即ちエンジニアード仕様がまとうグレーのグラデーションとネオンカラー。エアマックス95の伝統が息づいた究極のカラーウェイをまとうスペシャルエディションの登場だ。

 

NIKE AIR JORDAN 4 RETRO SE (2020)

エアジョーダン 4 ネオン

マイケル・ジョーダンが1988-89シーズンに着用したシグネチャー第4世代、エアジョーダン4はスピードプレイヤー向けに開発されたエアフライト89とソールを共有、シュータンに”Flight”ロゴを綴ったティンカー・ハットフィールドの作品。メッシュパネルやアンクルスタビライザーなど当時の先進技術を凝縮したレトロに、エアマックス95のネオンカラーを落とし込んだエポックメイキング。エアマックス95のオリジナルボックスを彷彿させるパッケージも特別仕様。

 

NIKE AIR MAX ZOOM 950 NRG (2020)

エアマックス95

生誕25周年を記念して発表されたエアマックス95の近未来コンセプト。足裏を包み込むクシュロンフォーム採用のソールユニットは前後に2段式ビジブルズームエアと270マックスエアを搭載し、異次元の履き心地を提供する。軽量かつ通気性に優れたモノメッシュ製のアッパーは、縫い目のない成型技術で流線型のボーダーを表現。エアマックス95の面影を残しつつ最先端テクノロジーを導入したハイブリッド、日本市場向けのネオンカラー。

 

NIKE AIR MAX 95 NDSTRKT (2020)

NDSTRKT エアマックス

NDSTRKTとは”indestruct”の略で「不滅、破壊できない」といった意味合いから、耐久性に特化したメッシュアッパーをリフレクティブなTPUケージで覆ったエアマックス95の最新バリエーション。オーバーレイの角張った形状やアウトソールのラグパターンは、アウトドアバスケットボール生まれのインデストラクトならではのハードなディテール。ネオンイエローの挿し色の利いたカラーウェイにも独自性を主張する。

 

NIKE AIR MAX 95 DENHAM (2020)

エアマックス デンハム

ジーンズ職人として国際的な知名度を誇るジェイソン・デンハムが2008年にアムステルダムで設立したデニムブランド、デンハムをパートナーに迎えたコラボ企画。エアマックス95のファーストカラーに見るグラデーションを質感の異なるデニム生地で表現したシックなイメージ。ジーンメーカーとして署名したデンハムのクラフトマンシップを感じさせるインソールにはハサミのプリントロゴ入り。